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【対談】野村万作 『狂言と舞踊の「違いがわかる」はなし』


野村万作対談02  野村万作対談03


狂言と舞踊の「違いがわかる」はなし
野村万作
聞き手・村 尚也

 狂言の人間国宝であり、かつて有名なコーヒーのCMにも出演した野村万作師
 舞台の芸談からお稽古のお話まで、興味深いさまざまなお話をうかがいました。




狂言と申しますと、お能のなかに登場する間狂言もあれば、別に狂言だけで独立しているものもあるわけで、流派は大蔵流と和泉流と2つあるわけですが、和泉流という流派は、先生のお父様、お祖父様方が再興なさった流派と聞いておりますが、そうですか?

万作
私の祖父は金沢から東京に出てきました。ただ、家元も絶え、三宅藤九郎という私どもの師匠の家も絶え、皆が復興しろとおっしゃったものですから、それで復興したんです。名前は違っていますけれど、芸は繋がっていますから。


狂言とは二百五十四番あるそうですが、どうやってお調べになるんですか。

万作
「名寄」(なよせ)という曲目一覧表がありまして、そこに二百五十四並んでおるんですよ。そのなかには殆んどやらないものも、つまらないものもあります。例えば「末広かり」などはよく上演されますが、類曲が3番ぐらいあります。


和泉流の中にも三宅家があったり野村家があったりしますが、各お家に伝承みたいなものはございますか?

万作
そうです。和泉流といっても家によって随分違います。台本が違います。別の流儀の人とやるくらいに違う場合もあります。例えば「宗論」、名古屋に野村又三郎家がございますけれども、役の性格まで違います。


万作先生のお家ではどのような性格なんでしょうか?

万作
浄土はむっつりとネチネチとやる。法華は、短期で強くて。柔らかいのと強いのと対象です。


他のお家では違った性格づけもあるんですか?

万作
大蔵流の茂山千作さんとも共演したことがあるんですが、基本的な性格は同じです。


そうですか。法華と浄土では装束が違いますね。和達は袴をくくるのをわんぶくろと呼んでいるんですが、お狂言では何とおっしゃるんですか?

万作
括り袴と脚絆。はじめに脚絆をしといて、そのうえに袴をはいて、袴の裾をひもを通しておいてくくる。つまり、半袴をくくる。


なるほど。括り袴にするものと、普通の半袴では、役の性格は違うんですか?

万作
違いますね。括り袴にするものは、旅という意識と、強いという意識がある。したがって、足の運びも強めにということが関連してきますね。


なるほど。ということは、家にいる役、太郎冠者などは半袴なんですね。

万作
そうです。僕たちは括り袴の脚絆の後ろ側が上がるようにします。上がることによって強さというか凛とした感じがそこに出ると思っている。


そうですか。そういうようなことがあるんですね。先生はお子さんの時からお祖父さんの萬斎先生とお父さんの万蔵先生にお習いになったそうで。お稽古はどうでしたか?

万作
父は厳しく、お祖父さんは優しかったです。お祖父さんに習ったのは4、5才くらいまでだったので、その後はとっても厳しかったですね。


お父様は毎日のように稽古を?

万作
戦争中だから舞台が少なかったので、暇でしょうがないんですね。。小学校の頃、稽古だってんで、商店街を耳引っ張って連れて行かれる。恥ずかしくてしょうがなかったですね。


お稽古は口うつしで?

万作
そうですね。だから時間がかかりますね。そのかわり、正確に伝わりますね。意味が分からないうちに、狂言の言葉をしゃべっている。


ほとんどの曲をそういうふうにお父様にお習いになったんですか。

万作
ほとんどと言いましても、父がやっていない曲もありますし、一曲には2つ3つの役がありますでしょう。だから全部の役をやるという訳にはいかない。限度がある。ことに最近になりますと、出来のいい、作のいいものをやりたいですね。ここに怖い批評家がいます。(笑)


(笑)そうですね。二百五十四番あるなかで、いつもやるというのは百番ぐらいとお聞きしましたが、そういったものはどんどん演出的にも演技的にも工夫が練られていくのでしょうね?

万作
祖父から父へ父から私と基本的には同じですが、晩年の父にも、やるたびに工夫を重ねている作品もあります。最近の私も父の芸の他に、叔父の芸を見て、今取り入れている面もある。


そうですか。狂言のお稽古は猿に始まると言われますが、「靭猿」のあとは、どんなお稽古に入るんですか?

万作
小舞と言いまして、狂言の舞があります。その謡を習って、それについている舞を習う。それから短い狂言を習うという順番です。


狂言では小舞、小謡など小さいという字をつけますが、どういう意味でしょう?

万作
可愛らしいとかいう意味でしょうか。


小品ですよね。短いは短いですよね。

万作
ええ。


先生は狂言の沢山ある番組の中で、特にお好きな物というのはやっぱり、釣狐でしょうか?

万作
好きに違いないんですが、好きというよりもやりがいがある。


大曲ですよね。披きといって特別になさるものがいくつかございますね。他にはどのような曲がございますか?

万作
順番に申しますと、奈須与一語、三番叟、釣狐、かなおか、花子、狸腹鼓。 


「奈須与一語」とは、八島の特殊演出ででてくるものですね。例の義経と与一と一人二役演じて語っていく。あれはカッコイイものですね。あこがれましたね。また三番叟の緊張感は素晴らしいですね。揉の段では掛け声をかけながら踏みますよね。なんと言っているんですか?

万作
掛け声は、「ヨ、ホンホ」。ハンハとも書きますが、そのリズムを自分で作りながら、お囃子と拮抗しながら進んでいく。つまりお囃子のリズムに合わせて舞っているのではなくて、お囃子のリズムと引っ張り合っている。闘っている。そういうところに私は三番叟の特長があるように思います。コミがやたらにあるので、それをきちんと覚えていないと笛の唱歌だけ覚えていても駄目。掛け声があってはじめて、お笛のメロディーともぶつかりあえる。


舞と掛け声、三番叟の場合はいっぺんに習ってしまうのですか?

万作
まず座って、師匠に掛け声をならい、手で腿を叩きながら足拍子を覚えます。それから別に笛の唱歌を覚えて、それから立稽古。


烏飛びというのがありますね。

万作
若い頃は高く飛ぼうと上にジャンプしようとしますが、本当は烏飛びというのはやはり烏の形。鳥が飛んでいる姿に見えなきゃいけないんだと思います。父の三番叟の写真の足つきを見ると、やはり鳥の足のように見えます。


烏を意識しているということは揉の段というのはやはり農耕ということなんでしょうかね?田んぼを耕しているイメージなんでしょうかね?

万作
お百姓にとっては烏を嫌うはずなんですがね。烏が飛んで逃げていくんでしょうかね?(笑)


なるほど(笑)

万作
私は三番叟というと、揉の段は先代の山本東次郎に憧れ、鈴の段は父の一種の老体が自然に身体にでてきている表現がとっても素晴らしいと思っています。


すると、揉の段は若々しいイメージで、鈴の段になると老体になる。そういう違いがあるわけですね。なるほど。話は変わりますが、釣狐という演目を万作先生は非常にこだわってなさっておられますね。この間袴狂言の釣狐を拝見して、感動いたしました。

万作
そうおっしゃっていただいて嬉しいです。あれを袴でやろうと思いついたについては、2つのことがあります。橋岡久太郎という大名人がおられて、その方の舞囃子で姨捨を拝見したときの素晴らしさ。衣装を着ないで紋付袴で簡素にやってる中で中身のある表現。その素晴らしさは、日本舞踊の素踊りの素晴らしさだと思うんです。狂言にも衣装を着ないで紋付袴で鑑賞していただけるような素踊り的、お仕舞的要素が欲しいなと思い、それを釣狐という曲で探求してみたいなと思ったわけです。


生きている者の悲しみみたいなものが出てくるんですね。最後幕に飛び込んだあとに、一声鳴くのが、生きているってこんなに切ないものなんだなと一挙に知らされた感じです。

万作
うん。


あと花子。歌舞伎舞踊では身替座禅についてですが、狂言を拝見していると、謡がいいですね。男の哀愁があっていいです。 

万作
私は初演の時に大学の先生から、もうちょっと色っぽくできないもんかねと言われましたね。(笑)身替座禅の方は酔って帰ってきますよね。それを僕らの方ではできないのです。



あの橋懸かりでの謡がなんとも言えませんね。物憂い感じで。

万作
花子にかぎっては、お幕と言わないということが私どもの家にはある。一般のお能でも狂言でもシテ役がお幕と言っていい資格があるわけです。普通だったら花子の後のシテが好きな女と別れて帰ってくるところでお幕というのですけれど、あえて言わない。つまり陶然と帰ってくるという意識なんだと思います。それと、かづきをとったときに、女房の顔を見ちゃいけない。そういう教えがあります。だから、醜女を見る場合は演技を誇張するために2度見るけど、花子の奥さんは、顔を見なくとも見えてくる。


察するということですね。そうですか。口伝があるわけですね。

万作
家によって違います。また、親父と叔父の花子では随分違います。叔父の方は工夫方。父の方はエネルギッシュにやる。

(この対談は去る8月15日、葛飾区日本舞踊連盟で行われたものからの抜粋です。)


野村万作対談01  野村万作対談04



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