朝崎郁恵◇村尚也 対談「海のリズム 風の声」其の一

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朝崎郁恵◇村尚也 対談 完全版
『海のリズム 風の声』


marosan   

其の一
『大和言葉と島口で…』
~「島の先生」裏話~




奄美大島にはどれくらいお住まいになっているんですか?

朝崎 
24歳のときに、主人の転勤で福岡に、それでそこに12年いまして、それから47年に東京に転勤になりましてそれでそのまま東京におります。最初は世田谷の岡本の方に官舎がありましてそこに12年ほどおりましてそれから千葉の銚子。主人が海上保安庁の船に乗っておりましたもので。銚子の海上保安庁の方へ転勤になりまして。


綱島にいらしてからはどれくらい立ちますか?

朝崎 
13年。

  
奄美大島から綱島へ。島の娘ですね。

朝崎 
そうなんです。島が好きで。島を求めて。

  
それで今度はNHKの「島の先生」に出てらしたんですね。
仲間由紀恵さんが主演で、大変に評判がよろしかったようですね。

朝崎 
そうなんです。おかげさまで。全6回です。撮影場所も私が生まれ育った花富(けどみ)村なんです。そこで小さい時に浜辺に出て唄を唄っていたんですけど、たまたまスタッフの方が今回そこで撮るからと言われた所が、私と妹が母親が畑から帰ってくるのを待っていたところだったんです。それにはびっくりしましたね。

  
偶然に。本当に引き合わせのようですね。

朝崎 
ご先祖さまの引き合わせです。そこで「はまさき」という子守唄を唄ってるんですけど、小さい頃の思い出がオーバーラップして蘇ってきて、その時はまだ戦時中ですから食べ物がなくて、山と海に囲まれた村なので、土地がないもんですから山を開拓してそこにさつまいもを植えるんですが、母がそれを取りにいってなかなか帰ってこない。お腹すいた私と4歳違いの妹(3,4歳)が海辺で唄を唄って母を待っていた場所なんです。

  
そうだったんですか。 すごい偶然ですよね。今回のテレビの役はおトシばあさんでしたか。

朝崎 
そう。そこの村の名物ばあちゃん。 

  
最初はなんだか一言挨拶して通り過ぎていく、すごいもったいない使い方でしたが、だんだんセリフが増えていったじゃないですか。

朝崎 
それも最初はNHKさんからお話ありましたときにセリフもないし、唄も申し訳ないけど今回はないですよと仰られて私も奄美を撮ってもらうということは私にとってこれ以上のことはないですので、セリフがなくても構いませんよとOKしたんですけど、一つづつセリフが増えていく、後で唄もとなったんですよ。(笑)
間に私は徳之島と長野で仕事があったものですからその間は私はテレビに出てないんですね。そうするとお祭りのところと船で鹿児島に出てくところに私がいないので、見てる人達がそこにトシばあがいないのはおかしいねと笑って言ってますけどね。これは裏話です。

  
この間のあのセリフの量は女優さん並ですね。

朝崎 
難しいですね。あれは体力との戦いですね、女優さんは。奄美大島は雨が多い所なんですよ。ホテルに今日これから撮るよと連絡があって行ってみたら夕方までそこで待っても撮れなくってまた明日。明日5時起きて行っても昼過ぎても撮れない、雨が降ってきたからまた明日って、ずーっと伸びて伸びて大変でした。

  
ご連絡いただいてうちの知り合い20人にメールしてほとんどの人が見ましたが、朝崎さんを知らない人が一人いて、あの女優さん誰ですかって(笑)、唄のうまい女優さんだって言って(笑)それは逆だって(笑)、あれだけセリフを言うと癖になっちゃうんじゃないですか。

朝崎 
それもセリフは奄美の言葉(方言)と大和言葉(標準語)、奄美の言葉だけじゃテレビ見てる人がわからないから半分半分つかってって言うんですね。ここでは大和言葉、ここでは島口(しまぐち)って、それが大変でした。島の言葉を奄美では島口って言うんです。

  
それは台本に島口で書かれてるんですか?

朝崎 
いや、それは標準語で書かれててそれを島口に直して、それをあんまり私が言い過ぎるもので「朝崎さん、それは言い過ぎ」って。そこらへんが大変でした。詰まってしまって。

  
島口っていうのは例えばどんな言葉がそうなんですか?

朝崎 
子供達が私があやしていた小さい子供を連れに来る。いますやすや寝てるから静かにしてなさいって言うところが撮影の時にはその赤ちゃんがなかなか寝なくて(笑)私が歌い出したら余計喜んじゃって長くかかっちゃったんですけど、子供達に「あなた達はこの島を出ていくの?うらきゃやぁ出て行くの?」って使わなきゃならない。

  
「うらきゃやぁ」というのはあなた達。そうか。混ぜないとわからない。

朝崎 
ところどころは標準語使わないといけない。

  
そうですか。僕もね、日本舞踊に子守という踊りがあるんですけど「うらにゃ乳はない」という歌詞があってわかんなくって。乳というのは胸のことなんですが、子守娘というのは娘だから乳はないという意味なんですが、僕はうらだから背中だと思って、そりゃ背中には乳はないなと思ってたら、うらというのが子守娘の国では自分という意味で使われる。古語ですね。

朝崎 
あなたという。(奄美では)下の子達に言うのをうらきゃやぁって言うんです。目上の人を呼ぶときには、なぁきゃ、汝ですね。わたし、我のことはわん。そういう大和言葉が使われてるんです奄美大島では。

  
そうですか。朝崎さんの唄を聞くとそういう言葉でほとんどの唄が唄われているじゃないですか。この間若い人がはじめて朝崎さんの唄を聞いた時も全くわかんないって言うんだね、だけど伝わってきますねって。

朝崎 
皆さんそう言われますね。

  
全く英語以上にわからないですね。(笑)それなのに何故か伝わってくるものがあるんですね。英語だと意味がわからないというだけで心が寒くなってきちゃう。ところが朝崎さんの唄は意味はわからないんだけど、ここらへんに何か記憶があるような気がするんですね。

朝崎 
皆さんそう言われますね。あの記憶があるって。一晩、雨が降って撮影が出来ない時に、あの今度あきよしって名前で島を出て行く子がいますけど、石坂浩二さんの息子役の井浦新君って言うんですが、その子が私の唄を聞きたいって言って。私のホテルの100メートルぐらい行ったところにライブハウスが一軒あって、そこで撮影スタッフ
全員集まって、私が唄を唄うこと知ってますので、朝崎さんの唄を聞きたいと言って。やっぱり心に来るって言ってましたね。

  
井浦新さん。いい役者さんで、「新日曜美術館」の司会もなさっている。美術に対して率直な思いを語っておられるんですけど、すごくいいです。

朝崎 
是非ライブやるときには声をかけて欲しいっていう、すごい奄美の唄が好きで。あの子が。帰りも涙々して。今やっているNHKのお仕事のパーソナリティやっているアナウンサーの方が私との接点がまた凄くあって、不思議に朝崎さんとのつながりがあるって新君が言ってましたね。

  
ご縁がある方はね。出会うんですね。

朝崎 
なんか不思議につながるんですよね。



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