矢之輔×國太郎×村 対談其の二

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其の二
『 矢之輔作、創作歌舞伎「髪飾不思議仕掛」!』


 今回は矢之輔さんは作家でもある訳じゃないですか。はじめてですかお書きになったのは。

矢之輔 そうです。本書いたのは、はじめて。恥はかいてますけどね。

 何をおっしゃる。これをやろうと思ったきっかけは何かあったんですか。

矢之輔 あのね。皆で話してて、子供さんに楽しんでもらうには何がいいかねって言ってる時に松浦君が「毛抜」をね、何とかならないかなっていうから、じゃあお姫様のクダリだけにしてやってみようかっつって台本削ってったんですよ。そしたら出来ちゃった。(笑)
それでそれ見せたら、これじゃ「毛抜」そのものだから、あとここを工夫して、あそこを工夫してって。うるさいのがいっぱいいるから。同じ結末じゃつまんないとか、毛抜きを踊らしたんじゃそのままだとか。
それじゃしょうがない何がいいかと考えてるうちに、毛抜が鏡になったり。やってるうちに弾正役をやるつもりだったんですがどうも玄蕃の方が面白いなと思って壊すならまずそっち壊すしかないなと思って。

 そこが今回のある種の趣向ですもんね。

矢之輔 だったらこのぐらいやらしてもらわないと。敵役で切られておしまいじゃつまんないと思って。それで将門を思いついたんです。

 その将門と結びつけた何かはあるんですか。

矢之輔 ないですないです。それしかないなと。憑依すると。自分が見ていて面白いなと思う芝居を書きたかったんです。

 大きな世界観があって面白いですよね。

矢之輔 うちはそういう芝居はあんまりつくれないじゃないですか。真面目に筋を追っていくとあそこに辿り着けないんだけど、だけどいい題材だなと思ってね。
踊りには年中あるじゃないですか。

 ありますけどね。この間の五月の国立大劇場の公演を拝見して、非常に新しい前進座だと褒めてしまったんだけど、時代物がちょっと弱いようなイメージがどうしてもあったんだけど、ところが皆さんがしかも若い人ばっかりで時代物が出来るんだとすごく僕は嬉しかったんですよ。今回の公演の前触れのようなね。まああちらは本公演だったけれども。

矢之輔 「髪飾」もあるし、この間の「秋葉権現」もあったけどとにかく時代物を身につけないとこれから大変だなと思ったときに皆が「対面」やりたいって言ったんです。それを勉強したいってんで。それがいい薬になったなと。

 「寿曽我対面」。稽古場でなさったんですか?どのくらい稽古なさったんですか。

矢之輔 8回ぐらいかな。一時間を8回ぐらいなんですけど、それぞれやっぱり色んなところから吸収してきてそれでやってね、それで悪いけど俺の言う通りに台詞言ってくれって言って、やったんですよ。そういう事ってあんまりやらない、ね。自分で考えて。今回はそれでやろうって言って。

國太郎 なぞるってことをね。まずね。

 ある種の工夫のしようがない。きっかり出来ちゃってるからね。ああいうものは。

矢之輔 でしょ。だからそれをやる人が違ったら、教える人が違ったらそれをなぞればいいんで。とにかく今回は俺のやる通りにやってって言ったのね。

 なるほどね。わりとつくっていく事の方が多いですよね。前進座さんはね。

矢之輔 そうすると基本が何かずれちゃう感じがしたんでね。押し付けだけどね。(笑)
俺のが絶対いい訳じゃないんだよ。だけど今回は俺が教えるんだからその通りにやってみてって言って。そういう経験をして。僕や國太郎もそうだけど、踊りだとそうじゃないですか。そこで創ってだとか自分で工夫してだとか考えてらんないじゃないですか。そらそこで足。膝はい。だからさ。やめちまえ!そういう稽古だからね。それは僕らは若い人等にもそういうの経験してもらってね。

 なるほど。前進座は創るお芝居は多いけど、型物なんかっていうのはどういう方から教わったとかあるいはこの芝居で習ったんだとかそういうのは國太郎さんなんかはあるんですか?

國太郎 やっぱ、女形はじめてやった時は祖父(先代国太郎)であり、父(先代嵐芳三郎)でしたよね。典型的なのは「俊寛」の千鳥や「鳴神」絶間姫なんかは父から。一挙手一投足ですよ。手取り足取り。台詞の上げ下げぐらいな感じで教わって。そういうことですよね。
そこにまだ自分の考え方なんか入れる余裕はないですよね。余地がないっていうか。まず言われたことをこなすことが必死でしょ。一ヶ月興行があって、また再演があって二回目の時にちょっと考えてみたりとか。それこそ「三人吉三」みたいにおかげさまで200回とか数やってくるとすごく今度はこう自分の生理とあってくるところがあるから、やっとはじめて自分の考えでやれるって感じですよね。

 なるほどね。矢之輔さんの場合は。いわゆる型のものはどなたからですか。

矢之輔 勉強会はおかげさまで何回かやらしてもらったんですよね。又五郎師匠とか歌右衛門さんのお弟子さんだったけどうちにいらした歌門さん。あちらに教わったり、色んな方が教えてくれる勉強会があったんですね。

 その頃は。ご一緒で。

國太郎 一緒でした。

 今そういう方で残っていらっしゃる方は。

矢之輔 今いらっしゃらないですね。それこそ吉之丞さんとか。あちらも教えて下さるんですがうちのやり方ですと世話物はどうしてもそっちにいくんですよね。時代物だと「対面」でもそうだし、「車引」でもそういった時代物は教わりましたよね。

 勉強会っていうのをやってた時期があるんですか。

矢之輔 國太郎 あります。

國太郎 「仮名手本」もやりましたもんね。

 それは劇場で公開なさって。

矢之輔 ええ。お金も取ってね。拵えして。もう20年以上前ですね。

國太郎 25年ぐらい前ですかね。

 そうでしたか。私は気付かなかった。失礼しました。

國太郎 「対面」は大まともにやったんです。

矢之輔 「車引」の時は又五郎師匠に随分ね、やっていただいて。本物の丸ぐけを浴衣の上に締めてね。そんで、「こういう形するんだ」っていい形なさるんですよ。そんで「わかった?」っておっしゃって、「じゃあほどくよ」って、ふっとやるとストンと落ちるんですよ、帯がね。ギュウギュウに締めてないから。

 (大笑)なるほど。そういう下地があって。現在にいたると。

矢之輔 先代の芳三郎さんも皆集めて巡業中でも何でも勉強会をやるんです。
「仮名手本」を大序から順番にやってこうって言って、大序やって三段目の喧嘩場やって、それで終わっちゃったのかな。七段目やんなかったかな。

 旅で稽古をしたってことですか。

矢之輔 そいでせっかく稽古したんだから、舞台もあるんだから舞台でやろうって言って衣裳貸してくれって衣裳屋さんに頼んで、鬘は高くなるからいらない。メイキャップだけして。というのをやったんですよ。そういうのもいい力になっている。

 そういう見えないところでの勉強をなさってらっしゃるからこういうことが出来るんだなー。

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